3日連続の星見

中々巡ってこない観測日和の夜晴れ。そんな夜の晴れが3日も続くことは、真冬の時期以外には中々なかったことだ。しかも、連休の中日の日曜日、久しぶりに朝まで撮影寝放置してみようかと思い立った。空の状態は比較的良好、時々上空に雲が出現するが、朝まで撮影すればある程度は撮影枚数が稼げるだろう

ところで…

前日まで2日間撮影してたセットを、未だ組んだままにしておいた。もしかしたら明日も晴れるかもしれない…という期待から、片付けずにいたのだが…

ふと、前日まで撮影していたIC1396やM31のモノクロ画像を撮影して、LRGB合成したらどうだろう…と思い立った

 

ここで一つの問題が浮上する。


 カメラの交換

せっかくのL画像はモノクロカメラで撮影したい。ただ、そのためには一度カラーカメラを外してモノクロに交換しなければならない。その何が問題かというと…

 画角がずれる

そう、LRGB合成をするのであれば、LとRGB画像の画角ができる限り一致していたほうがいい。動やったら可能な限り一致させることができるだろうか…

 

と考えて、とにかくSD81SIIとASI2600MCproの接続状況を詳細に確認し、カメラの接続角度を可能な限り一致させようということになった。具体的には…USBポートの位置を鏡筒のどこに合わせたらいいか…その一点に集中、カメラを接続ポート側から眺めてどのポートを鏡筒のキャリアハンドルの位置にしたらいいか、鏡筒バンドのネジの位置にしたらいいか…などを把握。慎重にカメラの付替えを行った。

 

これでも多少のズレは生じるだろうが、それでも大きく位置ずれしてLRGB合成に苦戦することはある程度なくなるだろう。結果は神のみぞ知る…

あとは撮影してからのお楽しみとなった

IC1396 ケフェウス座散光星雲 10/11-13LRGB合成

Telescope: Vixen SD81SⅡ+FL+RD(x0.79)

Camera: ASI2600MCpro(1)+2600MMpro

Filter: CBP 2''

Mount: SXP2

Guide: SV165+ASI120MMmini+IR/UVcut

Setting: Gain100Temp0Exp<180s x48fits><L:180s x27fits>

TotalExpose: 225min

ImageCapture: ASI AIR plus

Date: 10/12~13 From Balcony

Software: PI PS Bias60fl/Dark30fl/Flat30fl

[Edit History]

241014 PI(Drz/Int):DBE/PS+SPCC/BXT/NXT/Stretch→LRBGcombination


11日と12日撮影の合成RGBに、この日モノクロカメラ(ASI2600MMpro)で撮影したLを合成したもの。L画像の取得には、MMproにCBPフィルターを装着して撮影した。Lは93分撮影、総露光時間は225分と中々良い時間を確保できた。

RGB画像と比較し、黒いシミのような暗黒星雲がより鮮明に浮き上がった。構造も微細な部分まで描出されている。象の鼻星雲についてもRGB画像と比べやや鮮明になっている。解像度が3倍とるモノクロ画像が、微細な構造を浮かび上がらせてくれた。これがLRGB合成の面白さだ。

 

人の目には、カラーよりモノクロ情報のほうが解像度が高く映る。おそらく網膜の桿体細胞と錐体細胞の役割の違いによるものであろうと思う。ざっくり言えば、錐体細胞はカラー情報を、桿体細胞はモノクロ情報を取得するのであるが、この桿体細胞はより高感度で夜によく働く。夜間の太陽光が少ない時間帯に、より多くの情報を得るための、生命が得た”知恵”ともいうべきものだろう。

人の目は、明暗情報は非常に繊細に捉えられるが、カラー情報は比較的曖昧だ。そのため、天体写真でもモノクロのL画像を高解像度で撮影し、カラーは低解像度で撮影、それらを合成するという手法がよく使われる。人の目の特性に合わせて、画像処理を最適化した結果だ。なかなか巧みな手法だと思う。

M31 アンドロメダ銀河 10/12-13LRGB合成

Telescope: Vixen SD81SⅡ+FL+RD(x0.79)

Camera: ASI2600MCpro(1)+2600MMpro

Filter: CBP 2''

Mount: SXP2

Guide: SV165+ASI120MMmini+IR/UVcut

Setting: Gain100Temp0Exp<180s x39fits><L:180s x31fits>

TotalExpose: 210min

ImageCapture: ASI AIR plus

Date: 10/12~13 From Balcony

Software: PI PS Bias60fl/Dark30fl/Flat20fl

[Edit History]

241014 PI(Drz/Int):DBE/PS+SPCC/BXT/NXT/Stretch→LRBGcombination


M31も、前日に撮影したRGB画像にこの日撮影したモノクロL画像を合成した。L画像の合成の際に気をつけなければならないことがある。

合成元のRGB画像の輝度情報より、L画像の輝度情報が暗いと、合成後の写真が暗く眠たい画像になってしまう。もちろん、画像処理でうまくやればどうってことなく解決できるのだが、可能であれば合成の段階でより鮮明な画像を得られる方が、満足度も高い(気がする)。

LRGB合成には、ストレッチ後の画像を使用するため、L画像のストレッチをどのようにするかによって最終的に得られる写真の品質が大きく変わってくる。このあたりは経験が物を言う。

 

私は、LRGB合成を始めてまだ大した経験値を稼いでいない。これからは、LRGB合成を色々試し、より高品質な結果を得られるよう勉強していきたいと思う

NGC6960 網状星雲

Telescope: Askar SQA55

Camera: ASI2600MCpro

Filter: ALP-T

Mount: AM5

Guide: ZWO30mmF4+ASI120MMmini+IR/UVcut

Setting: Gain100Temp0Exp<300s x24fits>

TotalExpose: 120min

ImageCapture: ASI AIR plus

Date: 2024/10/13 From Balcony

Software: PI PS Bias60fl/Dark35fl/Flat30fl

[Edit History]

241013 PI(Drz):DBE/PS+SPCC/BXT/NXT/Stretch


今年まだ、網状星雲を撮影していなかった…。この美しい星雲を撮影したくて、色々と天体撮影のスキルアップを目指してきたのだ。

 これを撮らずして何を撮るというのか

今回は、新しい脅威の鏡筒SQA55で撮影を試みた。まぁとにかく出来上がりの品質がすごすぎる。焦点距離が264mmと短めだからということもあるが、とにかく星像が小さい!星雲の細部も驚くほど繊細に描出されている。これが12万円の鏡筒なのか!?

 

使用したフィルターは、デュアルナローのAntlia ALP-T。高性能な半値幅5nmのフィルターだ。星雲のあぶり出し能力は抜群!1枚300sec露光をすれば、ここまで美しく撮影できる。技術の勝利!

Sh2-170/171 クエスチョンマーク星雲

Telescope: Askar SQA55

Camera: ASI2600MCpro

Filter: ALP-T

Mount: AM5

Guide: ZWO30mmF4+ASI120MMmini+IR/UVcut

Setting: Gain100Temp0Exp<300s x23fits>

TotalExpose: 115min

ImageCapture: ASI AIR plus

Date: 2024/10/13 From Balcony

Software: PI PS Bias60fl/Dark35fl/Flat30fl


この星雲を撮影するのは、本年1月以来2回目。暗い対象のため、中々美しく描出するのが難しい星雲だが、今回はALP-Tと高性能鏡筒を使用し300sec露光を採用したことで、驚くほど鮮明に星雲の形を描出することができた。それにしても…

 赤い!

ドクロのようにも見え、なんともおどろおどろしい。以前の撮影では、Ha部分を明るく撮影できず、暗黒星雲もあまり明瞭に識別することができなかったが、今回は暗黒星雲の分布がはっきりわかる。デュアルナローフィルターの威力発揮!中々満足のいくできとなった

撮影後記

LRGB合成とデュアルナローによる撮影の二本立て。こうやって、一晩でいろいろな対象が取れることが朝まで撮影寝放置のいいところだ。

ちなみに、撮影寝放置では朝3~4時頃にアラームをセットし、その時間にムックリ起き出して機材を撤収する。まだねむけが残る中での撤収だが、その中でもフラット撮影はできるだけ忘れないようにしている。撮影時と同じ条件でフラットを撮りたいためだ。なかなか撮影終了を待つ時間が辛いところだが…これもいい結果を得るためには捨ててはいけない努力なのだ(大げさ)。