あけまして2024年

新たな年が始まった。天体観測を初めてほぼ一年が経過、天文2年目も撮影経験を積むべく、色々撮影していくぞ!

新年始まって一日半の業務、比較的落ち着いた年明けの外来を終え、また週末の連休になだれ込むという天文ファンにはたまらない今年の正月明けカレンダー。6日の夜は、天気が良ければお星さまを撮影しない手はない。幸い予報は晴れ!夕方から撮影準備をはじめることとした…のだが

意外と風が強い。望遠鏡を設置できないほどではないが、長焦点鏡筒だと風で煽られてブレが大きくなりそうだ。どうしようか…

幸い月齢24日で月明かりは強くない。月光カブリに悩まされることなさそう。これなら短焦点鏡筒で行けるんじゃないか…。そういえば最近FMA135を使ってなかったなぁ…

 

というわけで、本日はFMA135とFRA400のAskarコンビでの撮影を選択した。うちのバルコニーは壁に隙間がないから、強い風の影響は受けづらいが、それでも海が近いこともあり時々バルコニー内に渦巻くような突風が起こる。風に強い短焦点の強みを生かした本日の撮影。色々な焦点長の鏡筒を持っていると、天候による選択がしやすくて便利だ。

使用鏡筒

1)FRA400(+RD)/AM5/ASI2600MCPro/HEUIB-II

2)FMA135/SA GTi/ASI294MCpro/LPS-D3

IC2118 魔女の横顔星雲

[ Taget: IC2118 <魔女の横顔星雲> ]

Telescope: FRA400+RD(x0.7)

Camera: ASI2600MCpro(2)

Filter: HEUIB-Ⅱ2''

Mount: AM5

Guide: SV165+ASI120MMmini+IR/UVcut

Setting: Gain100Temp-10Exp<180s x53fits>

TotalExpose:  159min

ImageCapture: ASI AIR plus

Date: 2024/01/06 From Balcony

Software: PI PS Bias+/Dark+/Flat+

 

[Edit History]

240107 PI(Drz):DBE/SPCC/BXT/NXT/SCNR/Stretch(HT_Arc_Mask_Mask_Arc)/CT/HT

 


昨年、魔女の横顔星雲を狙ったことはあったが、露光時間やフィルターの選択がよく分からず大惨敗した。その時は、「この星雲を撮影することは無理なんじゃね?」と思ったのだが、Xでの投稿を見ているとアマチュアの天文家でも多くの方が、自分の持っている機材とほぼ同じもので美しく撮影している。よし、ならば天文2年目の今の機材と技術で見事撮影してみせよう!と意気込んで撮影開始。フィルターや鏡筒の選択は間違っていなかった。約2時間半の露光で、魔女の横顔の撮影を無事に達成した。

基本的にこの分子雲を撮影するなら、ナローよりブロード気味のフィルターがいいだろうと考えた。港の光害が気になる領域だが、月明かりは殆どない。行けるはず!!その狙いがバッチリ的中してくれた。一年間の経験が役に立ったようだ

 

それにしても不思議な造形、本当に魔女の横顔のようだ。どうしてこのような形になったのか…。オリオン座のリゲルからの恒星風が、この巨大な横顔を形成しているらしいのだが、何光年も離れている恒星から流れてくる粒子が、ここまで星雲の形成に影響するものなのか。この宇宙を支配する物理法則は、本当に壮大で不思議が造形を私達に提供してくれる。

NGC1893/IC405 勾玉星雲

[ Taget: NGC1893/IC405 <勾玉星雲> ]

Telescope: FRA400+RD(x0.7)

Camera: ASI2600MCpro(2)

Filter: HEUIB-Ⅱ2''

Mount: AM5

Guide: SV165+ASI120MMmini+IR/UVcut

Setting: Gain100Temp-10Exp<180s x61fits>

TotalExpose:  183min

ImageCapture: ASI AIR plus

Date: 2024/01/06 From Balcony

Software: PI PS Bias+/Dark+/Flat+

 

[Edit History]

240107 PI(Drz):DBE/SPCC/BXT/NXT/SCNR/Stretch(HT_Arc_Mask_Arc)/CT/HT

 


魔女の横顔星雲が港の光にまみれそうになる頃、FRA400の観測対象をこちらの勾玉星雲に変更した。このあたりは、散光星雲が点在してとても華やかな領域。写真右の勾玉星雲(IC405)は、オリオン大星雲で生まれた星が通過していることで、恒星の粒子風によって輝いている星雲とのこと。この星が通過しきれば、この輝きは失われてしまう。もちろん何万年も先の話だろうが、宇宙の一生からしてみれば瞬きほどの時間。宇宙に咲く花もまた、桜と一緒で儚いものなのだ。

 

約3時間の露光で、詳細な輝線星雲の構造を捉えることができた。中央の恒星の色合いも含めてなんとも美しい。水素が発する見事な紅に染まった漆黒の宇宙、この絶妙なコントラストに心を奪われる。宇宙の描く絵画は、繊細で大胆で奥が深い!散光星雲は、見ても撮影してもとても楽しいものだ。

IC434/Sh276 バーナードループ/馬頭星雲

[ Taget: IC434/Sh-276 <Barnard Loop> ]

Telescope: FMA135

Camera: ASI294MCpro

Filter: LPS-D3

Mount: StarAdventurer GTi

Guide: ZWO30mmF4+ASI120MMmini+IR/UVcut

Setting: Gain100Temp-10Exp<180s x33fits>

TotalExpose:  99min

ImageCapture: ASI AIR plus

Date: 2024/01/06 From Balcony

Software: PI PS Bias+/Dark+/Flat+

 

[Edit History]

240107 PI(Drz):DBE/SPCC/BXT/NXT/SCNR/Stretch(HT_Arc_Mask_Arc)/CT/HT

 


お次はFMA135による天体たち。まずは、一度撮影したかったバーナードループ。馬頭星雲とともに一つのフレームに収めてみた。バーナードループはオリオン座の東側を取り巻く赤い色の帯状の星雲だが、非常に範囲が広い。そのため、全体像を捉えるには100mmより短い焦点距離のレンズを使う必要がある。うちにある一番短い望遠鏡は135mm、全体を捉えるのは難しい。それでも、可能な範囲で帯をおさめてみよう…ということで、このような構図となった。

 

撮影を見返してみると、短焦点鏡筒の面白さと難しさを実感する。短焦点は、一つ一つの天体の詳細な構造を捉えることは難しいが、広い範囲を撮影することで天体同士の関係性を一目で認識することができる。選択する構図によっては、とても壮大でダイナミックな写真となる。その分、構図のとり方、そして最大の敵である光害カブリとの仁義なき戦いを強いられることになる。まぁそれはそれで画像処理ソフトをいじくる面白さを堪能できるわけだが…

 

自分としては、とても満足行く撮影結果となった。露光時間は2時間に満たなかったが、これ以上長くすると港光害の妨害にあって、画質向上を望むのは難しくなる気がする。この程度の露光時間にとどめておくのが吉、それか遠征かぁ…(時間がほしい)

Sh2-170/NGC7822 クエスチョンマーク星雲

[ Taget: Sh2-170/NGC7822 <クエスチョンマーク星雲> ]

Telescope: FMA135

Camera: ASI294MCpro

Filter: LPS-D3

Mount: StarAdventurer GTi

Guide: ZWO30mmF4+ASI120MMmini+IR/UVcut

Setting: Gain100Temp-10Exp<180s x20fits>

TotalExpose:  60min

ImageCapture: ASI AIR plus

Date: 2024/01/06 From Balcony

Software: PI PS Bias+/Dark+/Flat+

 

[Edit History]

240107 PI(Drz):DBE/SPCC/BXT/NXT/SCNR/Stretch(HT_Arc_Mask_Mask_Arc)/HT/CT

 


FMA135、2つ目の対象はクエスチョンマーク星雲。ケフェウス座からカシオペア座にまたがる大きな散光星雲で、とても淡い。淡いだけあって、そう簡単には写らないという。果たして、LPS-D3フィルターで映るのか…ちょっと不安だった。

 

結果は…、まぁ惨敗とはいかないけど、60分で撮影を切り上げたのでまだまだ露光不足は否めない。というか…、60分という時間が”短い”と感じるようになってしまった。天体観測初めた頃は、20分程度の撮影でも頑張った!って思えたのに。ランニングもそうだが、徐々に距離や時間を伸ばすと、感覚が麻痺して際限がなくなるというのである。怖い…

NGC2237/2264 ばら星雲・クリスマスツリー星雲

[ Taget: NGC2237/2264 <ばら星雲/クリスマスツリー星雲> ]

Telescope: FMA135

Camera: ASI294MCpro

Filter: LPS-D3

Mount: StarAdventurer GTi

Guide: ZWO30mmF4+ASI120MMmini+IR/UVcut

Setting: Gain100Temp-10Exp<180s x67fits>

TotalExpose:  201min

ImageCapture: ASI AIR plus

Date: 2024/01/06 From Balcony

Software: PI PS Bias+/Dark+/Flat+

 

[Edit History]

240107 PI(Drz):DBE/SPCC/BXT/NXT/SCNR/Stretch(HT_Arc_Mask_Mask_Arc)/HT/CT

 


この日のFMA135撮影本命、ばら星雲とクリスマスツリー星雲の共演。この構図も、昨年秋ごろから撮影したかったもの。ようやく念願かなって、撮影に臨めた。総露光は3時間20分、自分としても満足な撮影となった。散光星雲としてとてもメジャーなバラとクリスマスツリー、この二つを一つのフレームにおさめて撮影できるという贅沢。これが短焦点の楽しさかぁ、と画像処理をしながらニヤつく私(笑)。

 

クリスマスツリー星雲自体、しっかりと撮影できたのはこれが初めて。昨年何度かチャレンジしたが、フラットが合わなかったり、フィルター選択がおかしかったり…なかなか相性の悪い撮影対象だった。ようやく捕まえた聖夜のシンボル。クリスマスの時期を逸した撮影となったが、一ヶ月以上ずれなかっただけ良しとしよう。

 

こうやって写真全体を眺めると、メジャーな天体以外にもあちこちに輝線を放つ淡い星雲があるのが確認できる。これら赤い光は、水素原子が電離したときに放つHα線だ。ということは、この赤がある場所には水素ガスが豊富に存在するということ。なるほど、それだけ宇宙空間には水素原子が溢れているのだ。宇宙の主成分は水素…というのもこの写真からもなんとなく理解できる…きがする

総評

年始から、実に5つも天体を撮影できた。一晩で合計702分、実に11時間超!一晩の総露光時間最多記録を更新した。一天体にできるだけ長い露光時間を心がける!自分の望む写真を得るために必要な要件の一つとして、今年はこれに徹する。つまり…一夜の一途

 

今回はすべて、天の川銀河内の天体ばかりを撮影した。天の川銀河内には、メジャーな天体以外にも淡い星間ガスがあちこちにあり、露光を伸ばすとその繊細なガス雲の表情が見えてくる。系内天体の撮影の醍醐味とは、いかにガス雲を美しく詳細に撮影できるか…これに尽きる気がする。淡い天体ほど、その表情は繊細で美しい。その表情に触れるためには、もっと露光時間を伸ばすしかない。これからは、複数夜にまたがる撮影を試みていくようにしてみよう。そうすればきっと、新たな出会いが訪れるに違いない