久しぶりの-10℃冷却撮影

だいぶ夜の冷えが厳しくなってきた。厳しい…というのは、天体観測にとっては”ありがたい”ことだ。現在の天体撮影は、基本デジタルである。デジタル撮影では、光を集める電子素子(CMOS)の持つ”熱”が大変問題となる。長時間露光する場合、この”熱”により発生するノイズが撮影画像に映り込み、写真がザラザラになってしまうのだ。素子の温度が高ければ高いほど、ノイズが増えていく。

ということは…

素子を冷やせば、ノイズはへるんじゃね?ってことで、天体撮影では電子素子をしっかり冷やして撮影することが基本となっている(冷却機能カメラの場合だが…)。

 

ただし、カメラ周囲の気温が高いと冷却機能があまりうまく働かない。可能であれば、素子を-10℃かそれ以下に冷やしたいところだ。夏の間は、どうしても周囲の気温が30度近くなり、とてもじゃないがそこから40℃も冷やすのは至難の業、カメラの冷却システムに大きな負担をかける。一方、冬になるとカメラ周囲が元々低温になっているため、冷却がし易い。気温が高い時期は、0℃冷却が精一杯だったが、この時期は-10℃に冷却することが容易になる

 

というわけで、今夜は久しぶりに-10℃冷却での撮影に望むことにした。と、その前にダークフレームも-10℃用をしっかり用意しておかねば。前日夜、強風でとても観測ができなかったため、CMOSカメラをバルコニーに置いてダークフレームをガッチリ撮影しておいた。ヨシヨシ

撮影機器構成

SD115S(FLRD)+ASI2600MCpro+CBP / SXP2

Sh2-132

[ Taget: Sh2-132 <ライオン星雲> ]

Telescope: SD115S+FL+RD(x0.79)

Camera: ASI2600MCpro(1)

Filter: CBP 2''

Mount: SXP2

Guide: ZWO30mmF4+ASI120MMmini+IR/UVcut

Setting: Gain100Temp-10Exp<180s x60fits>

TotalExpose:  180min

ImageCapture: ASI AIR plus

Date: 2023/11/30-12/1 From Balcony

Software: PI PS Bias+/Dark+/Flat+

 

[Edit History]

231201 PI(Drz):ABE/SPCC/SCNR/BXT/NXT/Stretch(HT/HT/Arcsinh/Masked/Arcsinh/HT)/CT

 


今回の撮影は、11月30日と12月1日の二晩にかけて行った。

 

実は、これまで一晩の撮影を終えたら、必ず機器をすべてバラバラに外して片付けをしていた。性格上、なんとなくCMOSカメラやらASI airを鏡筒につけっぱなしで放置することが難しかったからだ。つけっぱなしだと、鏡筒が歪んでしまうのではないか、何かが倒れてきたときに壊れてしまうのではないか…(などの妄想が蠢く)。いつも必ずきれいに片付けて、次の日もまた組み立てて…とやっていた。

 

でも、一晩終了後片付けず、そのままの鏡筒で翌日以降も撮影すれば、ASI AIRの自動導入が機能している限り必ず同じ画角に目標天体が導入され、全く同じフレーム構成で撮影ができる。しかも、フラットも共通(一晩目のものを使い回せる)。露光時間を伸ばすのであれば、どうしても複数晩にかけて撮影する必要があるのだが、機器を分解しなければ効率は高まるわけだ(当然といえば当然なのだが)。このことは当初から気づいていたが、やはり性格上…一晩撮影を終えたら片付けずにはいられなかった。だが…

10月にバブル星雲と象の鼻を撮影した際、二日間に渡って撮影したものを合成した。このとき、一日目終了時に機器を外したため、撮影された写真の画角が少しズレており、最終的に大幅にトリミングして作品を小さく削ることになってしまった。これはもったいない。鏡筒と機器を取り外すことなく複数晩にかけて撮影すれば、こんな作品を切り貼りする必要はなくなる!

総評

そんなわけで、今回のライオン星雲では、二晩にわたり鏡筒機器を分解することなく、全く同じ鏡筒機器の構成で撮影を行った。3分露光を総計60枚と満足行く時間、編集も楽。今後は、この方式で露光時間を伸ばしていこうと思う。鏡筒の保管方法も色々工夫し、安心して保管できる環境を整えた。

これから、晴天の日が多くなる冬の季節。色々な天体を長時間撮影するのがますます楽しみになった。